Romanticismo

ここ数日冬に逆戻りしたかのように寒い日が続いている。夕方外に出てみたら、我が家付近の上空は雲もなく日没後の暗くなりかかったきれいな深い色が見えていたが、東の方角にとても大きい入道雲のような雲が見えた。中で稲妻がはしっているらしく時折青白くフラッシュする。その様子を見ていて思い出した。
R. Schumann(シューマン)が曲をつけた、J. v. Eichendorf(アイヒェンドルフ、1788-1857)の詩の一節。ドイツ語。

Aus der Heimat hinter den Blitzen rot
da kommen die Wolken her...
稲妻が赤く光っている、その先の故郷のほうから
雲がながれてくる

この情景と、僕が今夕観た異常気象じみたものとはかけ離れているだろうけれど、それぞれ幻想的だ。
じつは、そもそもこの詩を初めて読んだときから、赤い稲妻ってどんなものなのか、ぜひ見てみたい、と思い続けて約十年、未だにはっきりしたヴィジョンとして僕の中には浮かび上がってこない。きっとその風土やその時代のイメージまたは体験を持っている人々が共感できる感覚が、この一節の中にはあるのだと思う。
一度だけ数年前に、確か夕方ヨーロッパ独特の緩やかな丘陵地帯を車で走行中とある景色からふと「あ、この気分かもしれない」と感じたことがあったが、そのときは稲妻が走りそうな気配は全くなかったし、今改めて詩を読み返してみると、やはりちょっと違うように感じる。

ドイツでシューマンやアイヒェンドルフの活躍したロマン主義の時代、イタリアでは、Bellini(ベッリーニ)、Donizetti(ドニゼッティ)、さらにVerdi(ヴェルディ)等がイタリア流のロマンティシズムで数々の名作を生み出していた。。。という授業があるのだけれど、これがなかなか興味深い。
最近はドニゼッティの"Lucia di Lammermor"という北ヨーロッパ(スコットランドか)の陰鬱なお話から作られた作品がとりあげられた。話はほんとに暗いのだけれど、それにつけられた曲はというと、怒りのアリアも、怖い幻を見た話も、政略結婚を無理強いする場面も、結婚式乱入ぶちこわしシーンも、決闘申し込みも、世をはかなんで死を決意するアリアも、最後の自殺も、ほとんどすべて長調で、キラキラ美しい旋律でかかれている。
さすがラテン。。。

やっぱりイタリアで、赤く光る稲妻にお目にかかることは、むつかしいことなのかもな…。

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